DVとは、ドメスティック(家庭内の)・バイオレンス(暴力)の略で、DV離婚とは、DVが原因で夫婦関係が破綻し、離婚に至るケースをいいます。もしDVの被害に遭われていて、ご夫婦の関係に悩んでおられる方のために、解説します。

DVの種類とは

DVには、殴るなどの身体的暴力だけでなく、言葉の暴力、性的な暴力、また、生活費を与えないなどの経済的な暴力も含まれます。

身体的DV

身体を物理的に攻撃したり、脅威を与えるような行為です。例えば、殴る、蹴る、叩くなどはもちろん、髪や衣服を引っ張る、つばをかけるなどのことや、部屋に閉じ込めて監禁するなどのことも含まれます。直接身体にあたらなくても、物を投げつける、食器を床に叩きつけて割る、なども含まれます。

精神的DV

悪意のある言動で相手の心を傷つけ、精神的苦痛を与える行為です。いわゆる言葉の暴力、例えば、「バカ」、「死ね」、などと人格を否定するような発言、侮辱や中傷する発言、大声で威圧すること、常に他人と比較して陥れること、無視すること、「言うことを聞かなければ殴るぞ」「離婚したら死ぬ」などの脅迫や支配、「誰々とは付き合うな」といった人間関係への介入や監視などです。

性的DV

性的行為を強要するなど、性的な暴力です。夫婦間であっても、相手の同意なく性的行為を強制することは許されず、犯罪が成立する可能性もあります。望まない行為を強要される、避妊を求めているのに応じない、望まない妊娠をさせる、ピルの服用を強要する、嫌がっているのに性的な写真や動画を見せられる、中絶を強要する、などの言動が含まれます。

経済的DV

相手の経済的な自由を奪う言動です。生活費を渡さない、生活費を渡す際に土下座させる、性行為をしなければ生活費を渡さないと言う、金銭の管理を過剰に監視する、お金の使い方に過度に干渉し制限するなどのほか、働きたい相手を働かせないことや、相手に無断で相手名義で借金をして返済させる、などのことも含まれます。

DVで離婚する際の注意点

DVは法律上の離婚原因の一つである、「婚姻を継続しがたい重大な事由」に該当しますが、これを理由に離婚を進めるときは、次のような点に注意すべきです。

離婚話をする前の別居

DVの被害に耐えられず離婚したい、と思っても、これを直接相手に話すと、逆上されてさらなる暴力や攻撃を受ける可能性があります。そうなると危険であることはもちろん、冷静な話合いができなくなり、その後の離婚協議がうまく進められないということになりかねません。

そこで、できればまず秘密裏に別居先を準備した上で、離婚話をする前に家を出て別居を先行させるのが望ましいです。夫婦には同居義務がありますが、DVを理由に別居することは、正当な理由による別居ですから、同居義務違反として責任に問われる心配はありません。

DVの証拠を揃える

DVは通常夫婦だけの空間で行われますから、被害を受けたと主張しても、相手方が「そんなことはしていない」と白を切る可能性があります。

そのため、被害の立証のため、できるだけ被害の状況を録画、録音などの客観的な証拠に残しておくことが望ましいです。怪我をしたときはいくら軽い怪我でも医療機関を受診して診断書を取っておくべきです。録音などが難しいときは、少なくとも、日々の被害状況をできるだけ具体的に日記や手帳に記録する、友人や両親などに被害を受けたことを相談するLINEやメールをして残しておく、などのことをしておくべきです。

酷い暴力で警察沙汰になったときなどは、後で警察から出動記録などを取り寄せることもできます。

弁護士に相談する

DVの被害を受けたときは、できるだけ早く弁護士に相談すべきです。よく、「このぐらいの言動は夫婦なら我慢すべきだ」などと思い込まれて、酷いDVを受けているのにそう自覚できない方がいらっしゃいます。少しでもおかしいと思われたら、専門家に相談して、DVといえるのかどうか、離婚すべきかどうか、と言った点についてアドバイスを受けて下さい。

また、DVを理由に別居するときは、その時点で弁護士に依頼して頂き、弁護士から相手方に、「今後の連絡は一切代理人弁護士を通じて下さい。直接本人には接触しないように。」と要請する文書を出しておくべきです。そうすることで、行方を探されたり追いかけられたり、執拗に電話がかかってきたり、といった危険を防ぐことができます。

DVで離婚する方法

離婚は当事者間の話合いで進められればそれに越したことはありませんが、DVを理由とする場合は、冷静な話合いが困難な場合が多く、多くは離婚調停を申し立て、それでも調停が成立できなければ離婚訴訟を提起して離婚の手続を進めることになります。

離婚調停申し立て、費用

家庭裁判所に離婚調停を申し立て、指定される調停期日に双方が出頭して、裁判所の調停委員の関与の元で離婚条件等の話合いを進める手続です。期日では当事者はそれぞれ別々に調停委員と話をしますので、直接相手方と顔を合わせることはありません。

離婚調停手続を弁護士にご依頼頂く場合の弁護士費用は、着手金が33万円(税込)程度です。報酬金は相手方から得られた慰謝料等の金額などにより算定されます。

離婚訴訟、費用

離婚調停を申し立てても、話合いがうまくいかず決裂したときや、そもそも相手方が裁判所に出頭しない、など話合いができないときは、調停は不成立となり終了となります。そうなると、次のステップとして離婚訴訟を提起する必要があります。離婚訴訟では、離婚の原因としてのDVの具体的被害を主張、立証して、裁判所が離婚の成否などを判断します。

離婚訴訟を弁護士にご依頼頂く場合の弁護士費用は、着手金が55万円(税込)程度です(調停から依頼している場合は調停の際の着手金との差額となります)。報酬金は相手方から得られた慰謝料等の金額などにより算定されます。

まとめ

以上のように、DVによる離婚のケースは、それ以外のケースに比べて、危険があったり、証拠集めが難しい場合があったりしますので、できるだけ有利かつ安全に、離婚を進めるため、弁護士への相談をおすすめします。

場合によっては、保護命令などの法的措置をとる必要があるケースもあり、そうした判断も含めて、できるだけ早く、弁護士にご相談下さい。