結婚は、婚姻届を役所に提出することでできますが、離婚をするにはどのような手続きが必要なのでしょうか。これからご説明させて頂きます。

離婚の手続きの順番と流れについて

離婚の手続としては、①協議離婚、②調停離婚、③裁判離婚、の3つがあります。

①協議離婚

協議離婚とは、婚姻届で結婚したのと同じように、両者の合意のもとで離婚届を作成して役所に提出することによって離婚する方法です。

②調停離婚

調停離婚とは、両者の話合いだけでは合意ができなかったり、夫婦だけで話合いをすること自体が困難な場合に、家庭裁判所に離婚調停を申し立て、裁判所の関与のもとで話合いを進め、合意に至ったときに成立する調停調書に基づいて離婚する方法です。

③裁判離婚

裁判離婚とは、離婚調停でも合意に至らず、調停が成立しなかったときに、家庭裁判所に離婚訴訟を提起して、裁判所が離婚を命じる判決に基づいて離婚する方法です。

協議離婚の流れ

協議離婚は、夫婦両者の合意がありさえすれば、離婚届に双方が必要事項を記入、署名押印して役所に提出することで離婚が成立します。未成年の子どもがある夫婦の場合は、子どもの親権者をどちらにするかを婚姻届に記載しなければ離婚は認められませんから、親権に争いがある場合は協議離婚はできません。また、離婚に伴う財産分与や慰謝料、養育費といった離婚に関連するいろいろな事柄について夫婦で話し合い、合意した上で離婚届を提出することが望ましく、その場合そうした合意事項を書面にし双方で署名捺印した離婚協議書を別途作成することが多いです。

調停離婚の流れ

親権に争いがある場合や、離婚条件について双方の主張が折り合わず離婚の合意ができない場合、感情的になって夫婦だけでは冷静な話し合いができない場合、夫婦どちらかが話合いに応じない場合など、協議離婚ができないときは、家庭裁判所に離婚調停を申し立てる必要があります。

家庭裁判所に離婚調停の申立書を提出して受理されると、概ね1月後ぐらいの時期に第1回の調停期日が指定され、裁判所から相手方に、指定された日時に裁判所に来るよう連絡がなされます。

調停期日では、民間の有識者から選任された調停委員が夫婦それぞれから離婚や離婚条件についての希望や意見を聴き取り、それを相手方に伝えてそれについて検討してもらう、ということを繰り返して、合意が目指されます。調停期日では夫婦はそれぞれ別室で待機し、呼ばれたときに調停委員の部屋に入って話をしますので、夫婦が直接顔を合わせることは原則としてありません。

第1回調停期日で話合いがまとまらなければ、次回の調停期日が指定されます。調停期日は概ね1か月から2か月に1回のペースで指定されます。

しかし、期日を重ねても双方の主張が平行線で合意ができる見込みがない、というときや、調停期日にどちらかが出席しないことが繰り返され話合いが進められないと判断されるときは、調停は不成立として終了になります。

審判離婚の流れ

審判離婚は、調停離婚の一種とも考えられますので最初にご説明した3つの離婚の手続では挙げていませんでしたが、調停において合意ができているのに、何らかの理由で当事者が調停期日に出席できず調停成立の手続ができないときや、大筋で合意ができているが些細なことで対立があって調停成立とできないときなどに、家庭裁判所がその合意内容に従った「調停に代わる審判」を下すことで離婚が成立する手続です。「調停に代わる審判」が下されても、当事者がこれに異議があれば、2週間以内は異議申立をすることができ、異議申立がなされれば、「調停に代わる審判」は効力を失って手続は再び調停に戻されます。どちらからも異議申立が出なければ、審判が確定し、離婚が成立します。

裁判離婚の流れ

協議離婚も調停離婚も成立しなかったときに、離婚を求める側が家庭裁判所に離婚訴訟を提起し、審理により裁判所が民法に定められた離婚原因が証拠上認められると判断すれば離婚を命じる判決を下すことで、離婚が認められます。

離婚を求める側(原告)は、家庭裁判所に離婚を命じる判決を求める旨とその理由を記載した訴状を提出します。裁判所がこれを受理すると、第1回口頭弁論期日が指定され、相手方(被告)に期日呼出状が送られます。被告は、第1回期日までに、訴状の記載内容に対する被告の主張を記載した答弁書を提出します。以後の期日では、被告の答弁書に対する原告側の反論、さらにそれに対する被告側の反論、というように、双方の主張が書面でやりとりされ、あわせてそれぞれが自分の主張を裏付ける証拠を提出します。期日は概ね1か月から2か月に1回開かれます。双方の主張が出尽くし争点が明確になった段階で、原告被告双方の尋問が行われ、その結果も踏まえ、最終的に裁判所が争点についての判断をして、判決を下すことになります。

家庭裁判所の判決に不服があれば、判決の送達を受けた日から2週間以内であれば高等裁判所に控訴することができ、高等裁判所の判決に不服があれば、同様に最高裁判所に上告することができます。期限内に控訴、上告がなければ、期限の経過時点で裁判が確定し、離婚を命じる判決が確定すれば、それによって離婚が成立することになります。

「調停」と「裁判」は、何が違う?

調停離婚と裁判離婚は、いずれも裁判所で手続が進められる点は同じですが、二つの手続には大きな違いがあります。

話し合い、法的判断

調停離婚は、裁判所が関与して進めてもらえると言っても、あくまでも夫婦の話し合いが基本です。ですから、調停に参加するかどうか、どのような意見を述べるかは当事者の自由であり、裁判所から意見や判断を押しつけられたり、意に反した内容を強要されることはありません。

これに対し裁判離婚は、審理により、民法に定められた離婚原因が認められるかどうか、離婚に付随した諸条件(親権、養育費の額や慰謝料、財産分与の額など)について、裁判所(裁判官)が当事者の主張や証拠から判断をする手続です。例えば、一方が離婚を求め、相手が離婚はしたくない、と言っていても、証拠上、離婚原因が認められれば裁判所は離婚を命じる判決をし、認められなければ離婚を命じない(請求棄却)判決をする、ということになります。

離婚原因

調停はあくまでも話合いですから、法律が定めた離婚原因が仮に何もなくても、両者で離婚することの合意ができさえすれば離婚が認められます。

これに対し裁判では、民法が定めた離婚原因が証拠上認められれば、当事者の意向にかかわらず、離婚が命じられます。民法上定められた離婚原因は次の5つです。

  1. 配偶者に不貞な行為があったとき。
  2. 配偶者から悪意で遺棄されたとき。悪意で遺棄されたというのは、正当理由なく家を出て同居に応じない場合などです。
  3. 配偶者の生死が3年以上明らかでないとき。
  4. 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
  5. その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。

5 に当てはまる例としては、暴力や暴言が酷いとか、飲酒や浪費で家庭生活が崩壊している、などがあります。よく離婚の原因として、「性格の不一致」が言われることがありますが、性格の不一致も程度問題で、単に性格があわず仲が悪い、というだけでは「重大な事由」とはいえないでしょう。

公開、非公開

調停手続は、非公開で行われ、当事者の話を聞いた調停委員には厳しく守秘義務が課せられていますから、調停の内容が外部に漏れることはありません。

これに対し裁判の手続は原則公開となっています。日本国憲法が公開裁判の原則を採用しており、離婚裁判も例外ではないからです。もっとも、当事者のプライバシーへの配慮はなされ、裁判の記録が関係のない他人に見られることはありませんし、傍聴が認められるのも尋問期日など限られた期日だけです。

成立までの期間

調停では当事者の合意ができそうであれば、何回でも期日が続けられます。早ければ3~4か月で成立するケースもありますが長いものでは2年以上を要するケースもあります。

裁判離婚は調停が不成立となった後、訴訟提起から半年から1年程度で判決に至る例が多いのではないかと思いますが、長いものではやはり2年以上かかるケースもありますし、第1審判決が出た後控訴、上告が続けば、判決の確定までさらに日数を要することになります。

費用

離婚調停を弁護士に依頼する場合の弁護士費用は、着手金として33万円程度(税込)、裁判離婚を調停に引き続き依頼する場合の弁護士費用は、着手金として22万円程度(税込)の追加をお願いすることになります。報酬金はどのような解決ができたか、によりますので、詳しくは当事務所ホームページをご覧下さい、

子どもがいる場合に必要な離婚後の手続

離婚して住所が変わる場合、児童手当の住所変更や転園、転校の手続が必要です。また、お住まいの市区町村に、ひとり親家庭が受けられる公的支援を確認する必要があります。

子どもの姓を婚姻時の姓から変更するときは、氏の変更の手続を家庭裁判所で行った上、入籍届を役所に提出する必要があります。

まとめ

裁判離婚はもちろん、調停離婚も裁判所での手続ですから、裁判所での実務経験の豊富な弁護士へのご依頼をおすすめします。

また、協議離婚でも、早い段階から弁護士にご依頼頂くことで、合理的な交渉によって、調停や裁判にならずに早期に解決できる場合があります。

少しでも相手ともめそうな要素があれば、できるだけ早く弁護士にご相談下さい。