子どもがいる夫婦が離婚する場合、子どもの親権者を父と母とのどちらにするかが決まらなければ、離婚は成立できません。ここでは、親権者の決め方と知っておくべきポイントを解説します。

親権者とは

親権とは、子どもの利益のために監護、教育を行ったり、子どもの財産を管理する権利のことです。父親と母親が婚姻中は、父母の双方が親権者とされていますが、離婚する場合は父母のどちらか一方を親権者に定める必要があります。

親権の種類

親権には、どのような種類の権限が含まれるのでしょうか。

財産管理権

子どもの財産を管理する権限です。あくまでも子どもの利益のために行使しなければなりませんから、子どもの財産を好きなように使える権利では決してありません。

また未成年者は、一人で法律行為をすることができません。未成年者が法律行為をするためには法定代理人の同意が必要とされていますので(民法5条1項)、その同意をする権利も親権の内容の一つです。

身上監護権(監護権)

子どもの居所を決めること、子どもを健全に育てるために必要な措置をとること、子どもが職業に就くことを許可すること、など、子どもが成人するまで日々の養育を行う権限が認められます。

親権者の決め方

離婚の際に親権者を決めなければなりませんが、これはどのようにして決まるのでしょうか。

養育環境

親権は子どもの利益のための権利ですから、離婚後の子どもの養育環境として、父母のどちらの方がよりよいといえるか、が大きな親権決定の要素になります。

離婚前から別居が始まっているケースでは、別居時に子どもと同居している側の親に、離婚後も親権が認められるケースが多いのですが、これは、別居期間中子どもと同居する中で子どもの養育環境に特に問題がないのであれば、離婚後も引き続きその環境を継続させ、子どもの置かれた環境を極力変化させないことが、子どもの利益のためになる場合が多いからです。

経済力

父母どちらにより経済力があるかも、子の今後の生活や教育を左右する要素ではあります。しかし、経済力の問題は財産分与や養育費をしっかり決めることで対処すべき問題ですので、親権者の判断要素としては、それほど重要ではありません。

子供の将来、年齢

父母どちらを親権者とする方が子どもの将来にとって利益になるか、ということも判断の要素になります。また、子ども自身の意思も大きな判断要素です。特に、15歳を超えると子どもも自分の意思が的確に表明できるようになりますから、その意向が重視されることになります。

親権者が決まるまでの流れ

では、親権者が決まるまでの流れをみていきます。

話し合い

まず、離婚に際して父母どちらが親権者となるか、夫婦間で話し合いができ、合意ができればその合意に従って親権者が決まります。

調停

両者の話合いだけでは合意ができなかったり、夫婦だけで話合いをすること自体が困難な場合に、家庭裁判所に離婚調停を申し立て、裁判所の関与のもとで話合いを進め、親権を決めていく手続です。

調停の中で親権の争いが大きいときは、家庭裁判所調査官という、家庭裁判所の専門家が父母それぞれからの聞き取りや住環境などの調査、子ども自身の意向確認など様々な調査をして、どちらが親権者となるべきかについての判断のための資料を作ってくれる手続が取られることもあります。

裁判

離婚調停でも合意に至らず、調停が成立しなかったときに、家庭裁判所に離婚訴訟を提起して、裁判所に判断を求める手続です。

裁判所は、離婚を命じる判決を下すときは、必ず子どもの親権者を父母どちらにするのかを判断しなければなりませんので、離婚訴訟の中では、親権者としていずれがふさわしいか、双方が主張立証して裁判所に判断を求めることになります。ここでも家庭裁判所調査官による調査が行われることがあります。

まとめ

親権は、子どもの将来に大きく影響するとても重要なことです。子どもの利益に最も叶う結論が導かれるよう、専門家である弁護士にぜひご相談頂きたいと思います。