子どもがいる夫婦が離婚する場合、離婚後に子どもを育てる側は、相手から、子どもを育てるためにかかる費用を支払って貰う必要があります。この費用の支払がどのように決まり、どのように支払われるのか、支払われないときはどうすべきか、などについて、解説します。

養育費とは?

離婚すれば夫婦の関係はなくなりますが、子どもにとって父親あるいは母親であることは変わりませんから、父親も母親も、離婚しても子どもを育てる義務(扶養義務)があることに変わりはありません。

そこで、離婚後子どもを現実に引き取って育てることになる親は、子どもの衣食住にかかる費用、教育費、医療費など、子どもを育てるために必要な費用について、相手方が負担すべき部分については相手方から支払って貰う必要があります。これを養育費といいます。

養育費の相場と支払い期間は?

では、養育費はどれぐらいの金額を、いつまでもらえることになるのでしょうか。

養育費としてもらえる金額

養育費は、原則として毎月払いとなり、その月額を取り決めることになります。月額は当事者間で合意できればいくらでもよいのですが、合意ができない場合や、合意の目安にするために、一定の基準があります。この基準は家庭裁判所のWEBサイトに掲載されている、養育費の算定表によって、知ることができます。

この算定表に、養育費を払う側(義務者)の年収額、養育費を貰う側(権利者)の年収額、子どもの人数、年齢といった要素を当てはめることによって、養育費の目安額を知ることができます。

例えば、14歳以下の子どもが2人いて離婚後母が子どもを引き取って育てるケースで、父の年収が500万円、母の年収が100万円のケースですと、養育費の月額は概ね7万円から8万円程度となります。

養育費はいつまで支払う?

養育費は子どもが経済的、社会的に自立するまで支払われるべきことになります。現在は成人年齢が18歳となりましたが、18歳で成人したから養育費は終了、ということにはならず、現実に子どもが自立できるようになるまでは、支払うべき義務があります。

一般的には20歳までと取り決めるケースが多いですが、大学等に進学が見込まれる場合は22歳まで、とするケースもあります。

養育費が支払われない場合はどうなる?

離婚時に取り決めた養育費が支払われなくなったときは、どうすればよいでしょうか。

養育費の支払いが家庭裁判所での調停や審判、判決で決められているのに、これに従わず養育費が支払われない場合、これを支払わせるために、次のような手続があります。

履行勧告・履行命令

履行勧告とは、調停や審判で決まったことが守られない場合に、その調停をした家庭裁判所に申し立てることにより、家庭裁判所が電話等で「決まったことを守りなさい」と勧告してくれる手続です。ただし、あくまで勧告ですので、これに従わなかったとしてもペナルティーがあるわけではありません。

履行命令とは、調停や審判で決まったことが守られない場合に、その調停をした家庭裁判所に申し立てることにより、家庭裁判所から「決まったことを守りなさい」と命令してもらう手続です。この履行命令に従わなかった場合には、10万円以下の過料という制裁が課される場合があります。

強制執行手続

養育費の支払いが家庭裁判所での調停や審判、判決で決められているのに、これに従わず養育費が支払われない場合、調停調書等に基づいて、相手の資産を差し押さえることで強制的に回収を図ることができます。これが、強制執行手続です。

差し押さえることができる資産には、給与債権も含まれますので、相手が給料を得ている場合には、相手の手取り給与の原則として2分の1までの額を上限に差し押さえが可能です。

養育費を免除、減額することはできる?

一旦養育費について取り決めがなされても、その後の事情の変化により、養育費が免除、減額となる場合があります。養育費の支払義務者が病気や怪我で収入が得られなくなったり、何らかの事情で収入が大きく減少したようなとき、逆に、養育費をもらえる権利者の収入が大きく増加したとき、などです。

まとめ

離婚にあたり、離婚後の子どもの養育というのは切実な問題です。離婚後も親としての責務をしっかりと果たしてもらうようにするため、しっかりと手続を取っていく必要がありますから、ぜひ、専門家である弁護士にご相談下さい。