離婚にはどのようなお金がいくらぐらいかかるのでしょうか。離婚したいのにそうしたお金がないときは、どうすればよいのでしょうか。こうした離婚にまつわるお金の問題について、ご説明したいと思います。

離婚に必要なお金とは?

離婚をするためには、通常、大きく分けて2種類の費用が必要になります。一つ目は、離婚の手続に要する費用です。もう一つは、離婚の手続中や、離婚後の生活のために必要な費用です。

離婚協議にかかる費用

離婚の手続としては、①二人で合意をして離婚する協議離婚、②家庭裁判所での離婚調停手続を利用して離婚する調停離婚、③調停が成立しなかったときに離婚訴訟を提起して家庭裁判所に離婚を命じる判決をしてもらうことにより離婚する裁判離婚、の3つの手続があります。

このうち、①協議離婚は、離婚届に夫婦両者の署名押印をして提出すればよいので、特に費用はかかりません(本籍地以外の役所に提出する場合は戸籍謄本が必要ですので、その取得費用はかかります)。

協議離婚においても、相手との協議を弁護士が代理人として行うことを弁護士に依頼することもできます。その場合の弁護士費用は法律事務所によって変わりますが、概ね、着手金(弁護士に依頼するときに必要な弁護士費用)として10万円から30万円程度、報酬金(事件が解決したときに必要な弁護士費用)として離婚の合意ができたことに対して10万円から30万円程度、相手方から慰謝料や財産分与など、金銭的な利益が得られたときは得られた金額の5%~10%程度が目安かと思います(いずれも消費税は別途)。

離婚調停にかかる費用

②の調停離婚の場合、家庭裁判所に提出する申立書に1200円の収入印紙を貼る必要があります。また、離婚成立までの生活費を支払うよう求める婚姻費用分担請求の調停を別途申し立てる場合も、1200万円の収入印紙が必要です。そのほか、裁判所に納める郵便切手代、戸籍謄本等必要書類の取得費用が必要になります。

離婚調停を弁護士に依頼する場合の弁護士費用も、前記協議離婚の場合の弁護士費用と同程度の金額が必要になります。

離婚裁判にかかる費用

③の裁判離婚の場合も、家庭裁判所に提出する訴状に収入印紙を貼る必要があります。その印紙代は、離婚請求だけであれば1万3000円、養育費、財産分与や慰謝料の請求を加えるときは、子の人数や請求する額によって定まる額を追加する必要があります。詳しくは裁判所のウエブサイトを参照して下さい。

裁判離婚を弁護士に依頼する場合の弁護士費用としては、調停から裁判に移行する際に、追加の着手金として10万円から30万円程度、報酬金として離婚が勝ち得たことに対して30万円から50万円程度、相手方から慰謝料や財産分与など、金銭的な利益が得られたときは得られた金額の10%~16%程度が目安かと思います(いずれも消費税は別途)。

離婚後の生活費用(別居)

離婚を決意して手続に入るために、別居を始めるケースが多いですし、離婚が成立すれば、当然、離婚後の生活費がかかってくることになります。

そのための引っ越し費用や、転居先の敷金礼金等の初期費用、その後の家賃、水道光熱費、食費、被服費その他生活費、教育費等、具体的にいくらかかるか、よくシミュレートしておく必要があります。

離婚を決意したがお金がない時の対処法

離婚の手続に要する費用(裁判所に納める費用や弁護士費用)がないときは、法テラスの援助を受けることができる場合があります。これは、一定の基準額より少ない収入の方を対象に、上記の手続費用を国の機関である法テラスが一旦立て替え、その立替金を利用者が金利なしの分割払いで法テラスに償還していくという制度です。月額5000円からの分割払いが金利なしで利用できるので、経済的な負担が少なく裁判所の手続や弁護士の利用をすることができます。

また、裁判離婚の場合に裁判所に納める費用については、経済的にそれを負担することができない場合にそれを猶予してもらえる、訴訟上の救助申立をすることもできます。

別居、離婚後の生活費については、母子手当など、市区町村により公的援助を得られる場合がありますので、お住まいの市区町村役場等に問い合わせて情報を集めておくとよいでしょう。

請求できるお金(婚姻費用)

前にも触れましたが、別居後離婚が成立するまでは、配偶者としての地位がまだあるわけですから、収入の多い方が、少ない方に対して、扶養義務として、婚姻費用を負担する義務があります。相手方がこの義務を果たさないときは、家庭裁判所に婚姻費用分担請求の調停を申し立て、それでも相手方が婚姻費用分担に応じないときは、家庭裁判所が審判として、婚姻費用の支払を命じます。この審判により、相手方の資産(給与債権、預貯金など)を差し押さえ、強制的に回収をすることができます。

婚姻費用の額は、夫婦それぞれの収入額と、子どもの年齢、人数等により、一定の基準によって定まります。その基準は、裁判所のウエブサイトに掲載されていますので、これに具体的事情を当てはめることによって、婚姻費用額の概算を知ることができます。

受け取れるお金(養育費、財産分与、慰謝料、年金分割)

子どもがある夫婦では、離婚後の子どもの親権者を決める必要がありますが、それにより決まった親権者は、相手方に対し、子どもの養育費を請求することができます。その額は、婚姻費用と同様、一定の基準により算定されます。この基準も、裁判所のウエブサイトに掲載されています。

また、婚姻中に形成された夫婦共有財産については、離婚時に財産分与されます。原則として、別居時点の夫婦それぞれの名義の財産額を合算し、そこからそれぞれの固有財産(例えば親から相続した財産や、結婚前から有していた財産)を引き、それを2分の1として、多い方から少ない方に金額を精算するという計算をします。

さらに、相手方の不貞(不倫)、暴力、モラハラなどが原因で離婚に至ったケースでは、それによって精神的苦痛を被ったとして、相手方に慰謝料を請求できる場合があります。

その他、離婚後、将来の年金受給を独自に得ることができるよう、離婚に伴う年金分割の制度があります。

まとめ

以上、離婚にまつわるお金の問題を見てきましたが、本来請求できるのに知識がないために請求しなかったとか、お金がないので離婚はできないと思い込んでいたが実は利用できる制度があった、というようなことがないよう、まずは専門家である弁護士にご相談を頂ければと思います。あなたのご事情に沿った、最もよい進め方をご一緒に考えることができるはずです。