浮気をした配偶者が、浮気相手と一緒になりたいと言って離婚を求めてきた!?そんなケースで、離婚は認められるのでしょうか。
有責配偶者とは?
有責配偶者とは、結婚関係の破綻の原因を作った側の配偶者のことです。これが問題となるのはほとんどの場合不貞した側の配偶者です。
有責配偶者からの離婚請求が認められるケースとは
自分で不貞をしてそれが原因で夫婦関係を破綻させておきながら、離婚したいなどと求めるのはわがままで不道徳だから、そのような請求は一切認めない、というのが昭和20年代頃までの我が国の裁判所の考え方でした。
その考え方は今でも原則的な考え方ですが、その後、裁判所は次第に、そうはいっても破綻していてやり直せないなら有責配偶者からの請求であっても離婚を認めてもよい場合もある、という考え方にシフトしています。
有責配偶者からの離婚請求が認められるケース
夫婦関係が破綻してから長い年月が経っているケースでは、有責配偶者からの離婚請求であっても認められる場合があります。
例えば夫が不貞をしたことが原因で夫婦関係が破綻、別居に至って長い年月が経っている、というようなケースです。このようなケースでは、もはや夫婦が修復できる見込みはなく、離婚を認めないとしても意味がないわけです。
別居してからどれほどの年月が経てば離婚が認められるかについては、明確な基準があるわけではありませんが、これまでの裁判例を総合しますと、概ね10年以上というのが一つの目安です。
また、まだ独り立ちしていない子どもがない夫婦では、ある夫婦と比べて、別居期間は短くても有責配偶者からの離婚請求が認められやすい傾向があります。
ほかに、夫婦どちらにも夫婦生活の破綻の原因(有責性)がある、というケースがあります。離婚請求した側が有責配偶者であっても、離婚請求された側にも有責性があれば、離婚請求が認められる場合があります。例えば、妻が不貞をして夫に離婚を求めたが、夫にも妻に対する暴力があった、というようなケースです。
有責配偶者からの離婚請求が認められないケース
先ほど、別居の期間が長く、もはや夫婦が修復できる見込みがないときは、離婚を認めないとしても意味がないので、有責配偶者からの離婚請求であっても認められる場合があるとご説明しました。
ということは、逆に言いますと、別居の期間が長く、もはや夫婦が修復できる見込みがないときでも、離婚を認めないとする意味があるときには、有責配偶者からの離婚請求が認められない場合があり得ることになります。
離婚請求が認められないケース
離婚を認めないとする意味がある場合とは、例えば、離婚を認めてしまうと他方の配偶者が様々な意味で過酷な状況に置かれてしまうような場合です。こうした場合には、別居の期間が10年以上の長きにわたっており、夫婦関係が修復できる見込みはない場合であっても、離婚を認めなかった裁判例があります。
「過酷な状況」とは多くの場合経済的な困窮を指します。別居して夫婦関係が実質的に破綻していても、籍がある以上は、配偶者は他方配偶者に対し扶養義務がありますが、離婚が認められて籍が抜けてしまうと、扶養義務がなくなります。
例えば、資産もなく、病気その他で今後仕事をして収入を得ることが難しいような場合、配偶者による扶養が得られなければ将来の生活が困窮を極めると予想されるような場合には、離婚を認めずに、扶養義務を存続させる必要があると判断されることになります。
有責配偶者が離婚する方法
以上見てきましたとおり、有責配偶者からの離婚請求は認められないのが原則ですが、概ね10年以上の長期間にわたる別居を経て、かつ、離婚しても相手方が過酷な状況に置かれないようなケースや、相手配偶者にも有責性が認められるようなケースでは離婚が認められる可能性があります。
離婚を求めるには、まず、当事者間で話合いをして協議離婚する方法があります。話合いですから、有責配偶者からの離婚請求であっても、相手方が離婚に応じさえすれば、問題なく離婚ができます。
話合いが困難なときは家庭裁判所に離婚調停を申し立てる方法をとります。家庭裁判所の調停委員の関与の元で話合いがなされ、離婚の合意ができればよいですが、できなければ調停は不成立となり終了します。
最終手段は、離婚訴訟を提起して裁判所に離婚を命じる判決を求める裁判離婚の方法です。前述しましたような、有責配偶者からの離婚請求であってもこれが認められる事情を主張立証して、裁判所の判断を求めることになります。
まとめ
有責配偶者からの離婚請求のケースでは、通常の離婚請求のケースに比べて、様々な難しい要素が絡んできます。このようなケースでお悩みの方は、できるだけお早めに専門家である弁護士にご相談頂ければと思います。