夫と妻との間で離婚することで合意できたとき、具体的にどのようにして離婚届を提出するのでしょうか。ここでは、離婚届の取り方、書き方、提出の仕方などをご説明します。

離婚届はどこでもらう?

離婚届とは、夫婦が離婚する際に役所に提出する書類です。離婚の合意が成立したとしても、離婚は夫婦が合意しただけでは成立せず、離婚届が受理されてはじめて離婚成立となります。

離婚届の用紙は、市区町村役場に置いてありますから、役場に行けばもらえます。離婚届の書式は全国共通ですから、どこの役場でもらったものでも使うことができます。

また、インターネットでも書式をダウンロードすることができます。ただ、まだ紙で提出しないといけませんので、A3のサイズで印刷したものに、記入、押印する必要があります。

弁護士事務所でも用紙を置いているところが多いですので、弁護士に相談・依頼する場合は、弁護士から用紙をもらうこともできます。

離婚届の書き方

離婚届の記載に誤りや不備がありますと、書き直しや再提出を求められますので、書き方には注意が必要です。

記入項目

届出の日付

これは、離婚届を実際に役場へ提出する日を記入します。離婚届の作成日ではありませんので注意して下さい。再提出になる場合に備え、空欄にしておき、最終的に提出できるようになった時点で記入するのもよいでしょう。

宛先

日付欄の下に「~町殿」とある欄がありますが、これは離婚届の提出先として夫婦の本籍地の市区町村を記入します。住所地ではありませんので注意して下さい。

氏名、生年月日

夫婦それぞれ記載します。離婚後氏(苗字)を変えるときも、婚姻中の氏を記載します。

住所、世帯主

別居している場合も、夫婦で生活していた住所を記入します。

本籍

戸籍謄本で確認の上、本籍を記入して下さい。

父母の氏名、続柄

夫婦それぞれの父母の氏名を記入します。死亡していたり、離婚していても記入する必要があります。

それぞれが続柄は父母からみてどのような立場か(「長女」、「二男」など)を書きます。

離婚の種別

該当するものにチェックして下さい。合意で離婚するときは「協議離婚」にチェックです。

婚姻前の氏に戻る者の本籍

婚姻するときに氏(苗字)が変わった人は、離婚すると自動的にもとの姓に戻ります。これを復氏といいます。離婚でもとの姓にもどる人は、もとの戸籍にもどるか、新しい戸籍を作るかを選択できます。どちらを選んでも構いませんが、結婚中の氏をそのまま名乗りたいときや、子供を自分の戸籍に入れたいとき、また、もどる戸籍がないときは「新しい戸籍をつくる」を選びます。選択に従いどちらかにチェックを入れて下さい。

「もとの戸籍にもどる」にチェックを入れたときは、婚姻前の本籍地と、戸籍の筆頭者の氏名を記入します。

「新しい戸籍を作る場合」にチェックを入れたときは、新しい本籍地と、氏名を記入します。結婚前の氏に戻す場合には、旧姓を記入します。

なお、離婚後も結婚していたときの氏を使い続ける場合は、離婚届の戸籍と姓に関する部分は何も記載しないで下さい。この場合、別途、「離婚の際に称していた氏を称する届(婚氏続称届)」という届け出を提出する必要があります。

また、子どもを新しい戸籍に入れる場合には、「入籍届」の提出が必要です。子どもの氏を変更する場合には、家庭裁判所に「子の氏の変更許可の審判」を申し立て、家庭裁判所の許可を得る必要があります。

未成年の子の氏名

離婚時に、夫が親権者になった未成年の子の氏名、妻が親権者になった未成年の子の氏名をそれぞれの欄に記入します。未成年の子がある場合はこの欄の記載は必須ですので、未成年の子の親権者がどちらかに決まっていない場合、離婚はできません。

同居の期間

同居を始めた年月は、結婚式を挙げた年月か同居をはじめた年月のいずれか早い方を、同居したことも結婚式も挙げていない場合は婚姻届を出した年月を記入します。

同居を終了した年月は、別居した場合は別居の年月、同居したことがない場合は離婚届を出す年月を記入します。

この欄はだいたいの記憶で記入しても構いません。

別居する前の住所

別居する前に夫婦で住んでいた住所を記入します。別居した事実がない場合は空欄で構いません。

別居する前の世帯の主・夫婦の職業な仕事

これは厚生労働省の調査のための質問なので、強制ではなく、書きたくない場合は記入しなくてもよいです。

その他

その他の欄には、父母が養父母の場合に氏名を記入します。また既に亡くなっている又は離婚している場合にも記入が必要です。養父母とは、義理の父母を指し、養子縁組をした場合などがこれに当たります。

届出人の署名・押印

届出人は夫婦それぞれ自分の氏名を原則として自署し、捺印します。使用する印鑑は実印である必要はなく、認印でも大丈夫です。ただしスタンプ式やゴム印は不可です。夫婦それぞれ別の印鑑を押印します。

もし離婚届をどちらか一方だけで提出するとき、でも両方の署名押印が必要です。

証人の署名・押印

2名の証人の署名と押印がないと離婚届けは受理されません。離婚当事者でない成人(18歳以上)の人であれば誰でも証人となることができます。

離婚届のほかに用意するもの

離婚届の提出には、離婚届のほかに、夫婦それぞれの印鑑、本人確認書類(運転免許証、パスポート、マイナンバーなど)が必要です。

また、提出する市区町村に本籍がないときは、戸籍謄本が必要です。

離婚届の提出方法とは

離婚届はどのように提出すればよいでしょうか。

離婚届を提出するタイミング

離婚届は、離婚する旨と、未成年の子どもがあるときはその親権者をどちらにするかの合意ができていれば、いつでも提出できます。

しかし、離婚に伴う諸条件、たとえば養育費や財産分与、慰謝料などの合意ができていないときは、先に離婚届を提出してしまってよいかどうか、慎重に検討する必要がある場合があります。こうしたときは、離婚届の提出前に、弁護士へのご相談をおすすめします。

離婚届を提出できる人

離婚届は、夫婦が一緒に提出してもよいですし、どちらか一人で提出してもよいです。また、第三者に頼んで提出してもらうことも可能です。特に委任状などは不要です。ただ、もし記載に誤りがあったようなとき、第三者では対応できない場合がありますので、できれば夫婦で提出されるのが一番スムースでしょう

離婚届の提出の際の留意点

提出前に誤記や記入漏れがないか、十分にチェックして下さい。

また、仮に見た目が完全な離婚届ができていたとしても、提出する際に夫婦どちらかが離婚する気がなくなっている場合は、離婚届は受理されても、後日、離婚無効の調停や裁判が申し立てられ、紛争になることがありますから、双方の離婚の意思もしっかり確認して下さい。

なお、離婚の意思はないのに、相手が勝手に離婚届を出してしまうおそれがある場合は、そうした離婚届が誰かから提出されても受理しないで下さい、という趣旨の、「離婚届不受理申出」という手続をあらかじめ役場にしておくことができます。

提出先

離婚届は婚姻中の本籍地か、住民登録をしていた住所地の市区町村役場です。本籍地以外に提出するときは前にも述べましたように、戸籍謄本が必要になります。

また、離婚届は郵送でも提出できます。ただ、記載に不備があったときなどに手間取りますので、あまりおすすめはできません。

まとめ

以上は、協議離婚の際の離婚届の提出についてのご説明でした。調停や裁判による離婚のときは以上と違う点が出てきますので、弁護士にご相談下さい。

また、協議離婚の際も、離婚届に署名してよいのかどうか迷われる方、離婚届の書き方に不安な方などは、ぜひ弁護士にご相談下さい。